F1 日本グランプリ 2022 (鈴鹿サーキット) その2

ドラパレが終わった頃に雨が降り出しました。このタイミングでLエリアの観客は一斉にレインスーツを着だし、寒さもあってトイレ行列がかなりの長さに。雨はしばらくの間はポツポツ降るような状態が続き、路面的にはだいたいインターミディエイトタイヤのコンディションで、ピットレーンオープン。早速レコノサンスで各マシンが飛び出して来ました。

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3年近く観られなかったので、レインコンディションとは言え速さも音もさすがF1です。素晴らしい。

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ALPINEは鈴鹿で比較的好調。クルマはなんとも言えないなまくらな造形ですが、セットアップ巧者というか。

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MSCはFP1だったか、セッション終了後にクラッシュして評価ただ下がり。

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メルセデスはクルマの実力が出るサーキットでは全くダメ。雨とは言えそこそこのスピードの出るエリアですが、ポーパシングが外から見てわかるようなことはありませんでした。ドライなら300km/h近いこのへんでカッカッカッっという音がしていたのかな。

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マクラーレンは前戦の好調さが消えて目立たず。

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W13の這いつくばり方は群を抜いています。妙な凹みがなければシルエットはなかなかよいのではないかと。そういえば結局黒メルセデスは見れなかったな。

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RB18はこのエリアでも非常に安定した挙動でした。まあ今回はどのマシンも比較的安定していましたが。以前のマシンはドライでもスプーンでは乱れるケースがよく見られました。最近特に1-2コーナーとスプーンは、複合コーナーとは言え入口のコーナー感が薄れて完全に奥側1つのコーナーのように回っている気がします。大きく回るより1箇所でギュッと回る方がいいのでしょう。

そしてオープニングセレモニーへ。アナウンス通り、岸田首相の来訪が告げられ、表彰台からのスピーチが行われたそう。スプーンエリアではビジョンがないので聞いているだけです。まあ政府関係者の来訪タイミングとしては去年(開催していれば)のほうがよかっただろうな。もう今年はほぼ決着がついている状況なので、メンツが保てるかもしれませんが。首相のスピーチはあまり特徴のない内容で、スピーチライターの知識がだいたいわかりますが、最後に噛んでしまったのが残念。逆に言えば首相でも噛んでしまうほどのイベントとも考えられますがね。その後のコメントで「走る実験室」という表現が使われており、これも寄稿者の知識がかなり古いと思われます。いまのF1はそんな精度の低いことはしていないと思う。

次はホンダジェット上空旋回飛行。結構低くて送電線が大丈夫かと思えるほど。でもタイミングとしては国歌の後のほうがいいなあ。他のGPはたいていそうで、国歌が終わる頃に飛行音が聞こえて飛んでいく、というのがベストなのでは。大拍手で終わりますよ。

国歌斉唱は、特にどうとも。というか、なんであんなにコブシをきかせるアレンジにするのか不明。コブシとかヴィブラートとかは似合わない詩なんですけどね。まあ過去にもっとひどいもの(歌い手も)もあったので、それよりはマシか。独唱ではなく演奏のほうがいいと思うんですが、リバティがこういうのを望むんでしょうか。それと毎回出だしがカットインするのはなんなのでしょう。なかなか始まらないと思っていたら、わずかに音が切れて始まるというやつ。

雨は次第に強くなり始め、すでにインターよりエクストリームタイヤコンディションになりつつあった中、定刻通りにフォーメーションラップが始まりました。そしてスタンディングスタート。LECとVERが結構競ったそうですが、スプーンに来る頃にはやや差がついていました。

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今年の水煙はやけに目立つ気が。なおかつ気流が縦に渦巻くような感じで後方を直撃し、これは確かに何も見えなくなりそう。トンネルから渦を巻いて気流が放出されるケースが多かったように見えます。それとフロントからサイドへの流れにも注目。

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するといきなりSAIがヘアピン明け200R辺りでスピン、タイヤバリアのフェンスを引っ掛けてコース上に散乱させました。フォーメーション時点よりさらに雨が増えていたからでしょうか。HAMなど後続は際どく避けたところ、GASは最後尾から詰めて来ていたのでフェンスを掬ってしまい、あまりF1では見たことのない光景に。

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この時点での水煙はかなりひどいことになっており、後ろのドライバーは何も見えなかったでしょう。マシンが過ぎ去った後も煙幕がかなり残っていました。

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STRはスーパースタートで順位を上げていたようです。

スプーンエリアではあまり状況がつかめていなかったのですが、スタート後に雨が強くなり、赤旗もあるかなと思っていたら、実際LAP2でSC→赤旗に。路面状況というより、SAIとALBのマシン撤去が必要だったようです。赤旗前に重機が入ったわけですが、SCランに追いつこうとGASがハイスピードでその地点に到達してしまい、かなり怒っていたそう。レースコントロール側の判断がどうなのという説もありました。

津川さんのYTで、いやいやSCで重機が入るのは当たり前でGASの行動のほうが明らかにおかしいだろ、という説を聞きました。これは確かに納得。SCランで重機が入ることは通常作業なのと、タイヤが冷えるのでスロー走行したくないドライバーの心理とが交錯した事例かもしれません。しかしGASのスピードはタイヤ熱入れというよりなんとか追いつこうとしていたように見える。雨のSCランで重機を出すなということであれば事前に想定できるケースであるし、2014年の事故を運営が軽視しているとは考えにくく、カッとなるドライバーをカバーするレースディレクション(とレギュレーション)が別途必要なように思います(それがVSCのはずだったんですが、今回のケースは他にカバーする方法がなかったとも言える)。

ここからの中断が長時間に亘りました。雨は弱くなりそうな気配がなく、いくらレインスーツを着ていても雨粒が乗っかってしまい、体がどんどん冷えます。一度レース再開のアナウンスがあった後延期となり、そこからさらに1時間以上の中断。この時間帯が最も辛い状況で、気温も下がり、待つ方としてはひたすら耐えるしかない状態。屋根付きのスタンドでは、なにやらアストンのスタッフが盛り上げたりしていたようですが、西エリアはどうしようもありません。するとだんだん撤収を考える人が出てきて、多少空きスペースができるようになって来ました。そろそろまずいなと思い出した頃に、雲の切れ目が出るようになり、レース再開がアナウンスされました。15分前が定石のところ、10分前にアナウンスが出たので、やや急いだのでしょう。

実際、LAP2まで進んでいたのでレースタイムはカウントされており、3時間制限の残り時間はどんどん減って40分程度となっていました。16:20ごろにセーフティカー先導でローリングスタート、エクストリームウェットタイヤでレースが再開しました。

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やや雨量が減っていたこともあり、レース再開後すぐにVETがインターミディエイトタイヤへの交換を挙行。

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これが功を奏し、順位を上げます。ドライバーによってはまだ交換のタイミングではないと粘っていましたが、だんだんと雨量が少なくなり、全員がインターに交換してレースが続きます。

AMR22は晴天でカラーがどう見えるのか見てみたかったところ。ちょっとイエローラインが目立ちすぎですがやはり美しい。RBから空力の人が移籍して、さっそくシルエットが似てきたものの、形は寸詰まりに見え、リアの絞り込み不足とフロントのアップノーズがやや短く見えます。リアはプルロッドサスですね。RB18とは似て非なるもの。HRCホンダ(わざわざ言わなくていいか)エンジンじゃないし。

VERとLECの間隔はすぐに開きだし、ほぼVERの独走となりました。

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今回は下位でもそんなにクルージングしているクルマはなく、随所でバトルありでした。

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角田くんはタイヤ交換のタイミングが悪く、多少挽回したものの、ポイント獲得には至りませんでした。

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最後まで続いたLECとPERの攻防。結局シケインで飛び出したLECがペナルティを食らい3位に降格、VERのワールドチャンピオンが決定しました。レース終了時点では、筆者も含め、たぶんLエリアの観客でそのことをわかっていた人は少なかったと思います。VER本人もそうだったようですし。フジNEXT解説陣も、後で放送を見ると、結構長く今回チャンプ決定のはずはないと粘っていましたが、表彰式が終わってから、今回の条件がフルポイントに該当することがわかったようでした。チャンプ決定レースとしてはやや消化不良だったかもしれません。まあそれもレースでしょう。

ファイナルラップの解釈も混乱があったようで、VERがウイニングランで通過した後に、レーシングスピードの何台かが走り去り、そのあとクールダウンのPERやLECがやってくるなど、どっちだ?という状況に。2019年のチェッカーも問題がありましたが、今回も混乱があって、ルール自体ははっきりしているものの、レースコントロール側の周知改善が必要ではないかと思います。

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250R先に窪地があり、終盤はタイヤの減った影響で多少フロアが擦りやすくなったか、火花が飛んでいました。デグナー1の窪地はレースではどうだったんだろうか。FP1/2では結構ガツンと音がしていましたが、スピンの情報はなかったようで。MAGがデグナー1でオーバーテイクを決めていたようですね。

まあとにかく、3時間に亘る忍耐のレースが終わりました。ドライバーは約半分の周回数だったので多少ラクだったかも。2014年の雨も、赤旗終了まで続いた記憶があり、相当苦労した覚えがありますが、今回もそれに匹敵するコンディションでした。待ち時間は今回の方が長かった...

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レースが終わる頃にはほぼ雨も上がり、傘の必要もなくなっていました。

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中断中に降り続いた雨で、砂利のない地面は湿地に変貌。屋外イベントはどうしてもこういうことが起こり得ます。雨予報が事前から出ていたので、観戦エリアで傘をさして怒られる人もほとんどなく、ゴミも少なく、コンディションの割には問題が少なかったかもしれません(救急車のサイレンは鳴っていました)。相当寒い思いはしたのですが、ひさびさにF1マシンの走りが見られたのでよしとします。

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